決意文
本日二月二十六日は、昭和維新運動の中核を成す二・二六の決起から八十八年となる。
昭和4年、アメリカでの株価暴落を発端とした世界恐慌の波は世界を覆いつくした。
我国でも経済の要を担う繊維産業はアメリカ向け生糸の輸出が滞り、企業が相次いで倒産。
インテリ階層さえも職に就くことが適わず「大学は出たけれど」、という言葉が流行した。
東北地方を襲った冷害は昭和十年まで続き米・農作物の収穫量も少なく、貧農では娘を身売りに出す家庭が相次いだ。加えて昭和八年三月三日に岩手県沿岸を襲った昭和三陸津波では三千人余の人的被害を蒙った。東北地方では欠食児童がでるなど、困窮度は益々加速していった。
しかし、財閥や政治家は疲弊する庶民の暮らしを顧みることなく私利私欲を満たし元老や軍閥、政党、役人が権力を握り欲しいままに権勢を振るっている。
疲弊する地方の農民や窮乏する庶民を救いたいとの私心なき国家改造の理想を掲げ決起したのが88年前の二・二六事件の発端である。
理不尽な日本を天皇陛下の親政の下で更生される事を希求した決起であったのだ。
この時代背景を現代日本に置き換えても共通するところは大きい。
元日に石川県を襲った能登半島地震により多くの家屋が倒壊し多数の犠牲者が出た。
能登半島地震に限ったことではない。十三年前の東日本大震災しかり、北海道・熊本県・鳥取県など、煌びやかなネオン輝く首都東京を避けるかの如く、経済的に疲弊した地方を狙う様にして震災が発生している。震災から街は復興しても一旦避難した住民が戻って来ることは困難な現実がある。
只でさえ、現行の政権は地方の切り捨てに奔っているのが現状である。
東京都心の土地の付加価値を高めるために建物上空を容積率として利用できる空中権を設定し、公共の財産である公有地の上空を大手デベロッパーに売却しているのである。
大手デベロッパー・不動産業者・ゼネコンはタワーマンションなる箱モノを建築して狭小な土地に対し、無秩序なまでに多くの人々を住まわせることに狂奔している。
高層階に住まう事が金持ちのステータスであると洗脳された都心周辺や都市近郊に住む小金持ちが続々と購入し移り住んでくる。
すると空いた東京近郊の土地・建物に対してはドミノ式に地方から人々が移り住んでくる。都会へ移り住む体力・気力、経済力を持たぬ老人だけが地方に取残され人口減少に拍車がかかる。鉄道は廃線となり、商業施設も閉鎖され地方は加速度を増して衰退していくことになる。
2月22日に、日経平均株価は平成元年以来の最高値を付けた。日本経済が活況を取り戻したと浮かれているが、庶民の懐が潤っている訳ではない。
投資家やIT長者など一部の富裕層がこの世の春を謳歌しているに過ぎない。
首都東京都と地方。富裕層と庶民。全てにおいて二極化されたこの歪な社会構造は、為政者にとっては恣意的に構築された理想社会といえる。
自らの既得権益を拡大し一部特権階級が社会を支配する。
この不誠実なる社会構造に異議を唱える我々国家革新勢力や価値観の異なる異分子を排除・駆逐することが戦後体制構築の最終的形態と彼らは目論んでいるのである。
至純の魂をもって国家革新運動に邁進した先人の志を無駄にすることなく、昭和維新に代わる令和の維新を現実のものとすべく、我々は本日ここに思いを新たにするものである、
令和六年二月二十六日
二・二六事件墓前祭
青年将校遺族代表 槇泰智