旧優生保護法の下では非人道的は強制不妊手術が行われてきた。
精神的・肉体的な障害があり、産まれてくる子供に遺伝するとか、生育環境が整わない等の理由だが、中には孤児であるとの理由で対象とされた者もいる。
本人の同意も無かったり騙して手術を行うなど、現在の世の中では考えられないことだ。
現在では障害者でも自由に妊娠し出産・子育てが認められている。
ただ、産まれてくる子供が健常者の子供と同等の生育環境を得ることができるのかを考えると、手放しで賞賛する訳にもいかない。
重度の統合失調症を患う夫婦が障害者年金を受給しアルバイト生活で子育てをしているという話を聞くが、その子供は健全な生育環境に置かれているのか心配になる。
自らの意思に反して不妊手術をされないと言う当たり前の権利を得たいとう事は障害者にとっては喜ばしい。
しかし、重度な統合失調症の両親によって日々の情操教育を受ける子供の将来というのは健常者の子供と同等であるのだろうか、という心配は付きまとう。
子供が欲しい、子育てがしたいという親の欲求が優先されることで必ずしも十分ではない生育環境におかれる子供に過度な負担はかからないだろうか。
これは、障害を負った子供が生まれる事を承知の上、人工的妊娠での高齢出産も同様であろう。
また、男に興味はないが子供だけは欲しいと、妊娠の為に精子の提供を受けるシングルマザーもしかり。
物心ついた子供に「父親のいる家庭といない家庭のどちらが良かった?」と聞けば答えは自明の理。
産まれてくる子供に対してはでき得る限り負担の少ない生育環境を提供してあげたい思うのが普通の親。
優生学というとナチスドイツが引き合いに出され、障害者を淘汰する悪しき思想と思われるがそうでもない。
心ならずも障害を負ってこの世に生を受けた子供に対しても手厚い福祉のもとで健常者に近い生育環境を提供するのは当然の事。
しかし、これから生まれて来ようとする子供には、出来得る限り苦難な状況に置かれることなく健全な肉体と精神を有して産まれてきて欲しいということなのである。
旧優生保護法 強制不妊訴訟 原告の請求棄却 札幌地裁判決
旧優生保護法(1948〜96年)下で不妊手術を強制されたとして、全国で初めて実名を公表して提訴した札幌市の小島喜久夫さん(79)が国に1100万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、札幌地裁は15日、旧法を違憲と判断した。同種訴訟で違憲判断は3例目。広瀬孝裁判長は「旧法は極めて非人道的。子を産み育てるか否かの意思決定をする自由を侵害し、違憲」と述べた。しかし、不法行為から20年で賠償請求権が消滅する「除斥期間」が経過したとして、原告側の請求を棄却した。 【写真特集】国に謝罪など求め 緊急集会 全国9地裁・支部で起こされた同種訴訟13件(原告25人)のうち4件目の判決。2019年5月の仙台地裁判決と20年11月の大阪地裁判決も旧法を違憲と判断しているが、家族を形成する権利につながる憲法24条の違反を認めたのは初。賠償請求に対しては、同6月の東京地裁判決も含め過去3件はいずれも除斥期間が過ぎていることなどを挙げ棄却している。 判決などによると、小島さんは19歳だった60年ごろ、家族との関係が悪化し生活が荒れる中で、札幌市内の精神科病院に入院させられた。医師の診察はなく「精神分裂病(現在の統合失調症)」とみなされ、同意もないまま不妊手術を強いられた。 判決はまず、旧法の違憲性を検討。旧法の「不良な子孫の出生を防止する」という立法目的について「個人の尊重を基本原理とする憲法下において許容しがたい」と指摘。幸福追求権を定めた憲法13条や法の下の平等を定めた14条に加え、24条についても「国会の立法裁量の限界を逸脱すると言わざるを得ない」と判断した。その上で民法の除斥期間の起算点を手術時とし「賠償請求権は80年ごろに消滅した」と結論づけた。 原告側の弁護団は「不当判決を受け入れることはできない」と控訴する方針。厚生労働省は「国の主張が認められたものと認識している」としている。【土谷純一】 <判決骨子> ・旧優生保護法は憲法13条、14条、24条に違反する ・民法の「除斥期間」の規定により、不妊手術から 20年が経過した1980年ごろに賠償請求権は消滅 した ・被害者救済のための立法措置は国会の裁量の問題 で、国家賠償法に加えた措置を取らなかったことを 違法とするのは困難 ◇旧優生保護法 ナチス・ドイツの断種法をモデルにした国民優生法が前身で、終戦直後の1948年、法文に「不良な子孫の出生防止」を明記し、議員立法で成立。国は施行後、「だまして手術してよい」と都道府県に通知し、強制性を強化した。国際的な批判を背景に96年、障害者への差別的条項を削除して母体保護法に改定。「強制」「任意」合わせ少なくとも約2万5000人が手術された。