4月27日、南朝鮮パンムンジョムにおいて南北朝鮮の首脳会談が開催された。
朝鮮半島における非核化を目標とするなどとしたパンムンジョム宣言に署名したが、具体的な中身は示されていない。
両首脳が直接の対話を持ったと言う以外に特筆すべきものはない。
単なるセレモニーであり、数週間後に迫った米朝首脳会談への地ならし程度とも言える。
南朝鮮国民へのインタビュー映像を散見するに、笑顔を振りまくキム・ジョンウン労働党委員長に対し好意的なコメントが目立った。「本当は良い人」なんだと宥和的な見方をする市民が目立つ。
専制と隷従政治の下で自国民に対する弾圧と飢えをもたらす人権抑圧の独裁者としての正体を隠蔽し南朝鮮国民に好印象を与えたという事だけでも北朝鮮・キムジョンウンの勝利と言えようか。
この後の、米国トランプ大統領との会談が主戦場となる訳であるが、どういった展開がみられるのか。
米国はさほど強い態度に出ることなく、史上初の米朝首脳会談を果たした米国大統領との名声を残したいというトランプ氏の自己満足を満たすだけのセレモニーになるのではないか、との危惧を抱く。
従来のアメリカであれば戦場に取り残された一人の兵士に対しても全軍総力をあげて奪還するといった姿勢を示すことで、国民の国家に対する忠誠心を掻き立てていた。
今現在、米国民が二名北朝鮮に拘束されている。また昨年6月には一年半に渡り身柄を拘束されていた22歳の青年が意識不明のまま送還され数日後に死亡した。
過酷な拷問を受けたか脳を損傷させるような措置が施された可能性が高い。
この問題だけ取り上げても従来の米国なら強く抗議してしかるべきであろう。
自国民に対する人権侵害に対してさえも口を噤むトランプ政権であれば、日本人拉致に対して強い態度で交渉にあたることを期待できるであろうか。
トランプ米大統領が真に世界秩序を希求するのであればマレーシア・クアラルンプール空港におけるキン・ジョンナム殺害事件の責任を追及すべきである。キン・ジョンウン委員長が殺害の指令を発している事実を認めさせ殺人罪に問うべきなのである。
側近に対する粛清という殺人、自国民に対する弾圧・処刑、飢餓によって死に至らしめる行為も犯罪である。
この若き指導は現在の世界基準から見るならば明確なる犯罪者に他ならない。
米国がイラクのフセイン大統領やアルカイダのオサマビンラティン氏を殺害したり、リビアにおいてはカダフィー大佐殺害にも手を貸した最近の行為から検証するなら、キン・ジョンウン委員長に対して友好的態度にでることなどあり得ないはずである。
死亡の米大学生両親、北朝鮮を提訴「残酷な拷問で殺害」
北朝鮮で約1年半拘束され、昏睡(こんすい)状態で解放されたのちに昨年6月に死亡した米バージニア大学生、オットー・ワームビアさん(当時22)の両親が26日、北朝鮮の金正恩政権から「残酷な拷問を受けて殺害された」として、北朝鮮を相手取り、連邦地裁に損害賠償訴訟を起こした。26日の米ワシントン・ポスト紙(電子版)が伝えた。
ワームビアさんは2016年1月、平壌のホテルにあった政治スローガンが書かれたポスターを盗んだとして拘束され、国家転覆陰謀罪で15年の労働教化刑(懲役刑に相当)の判決を受けた。昨年6月に解放されたものの、ワームビアさんは脳を激しく損傷しており、帰国から数日後に死亡した。
父親のフレッド氏は声明で「(息子は)人質として取られ、政治的な目的のもとで囚人として拘束された」「金正恩政権は故意に息子の命を奪った」と訴えた。ワームビアさんの死をめぐる訴訟が米朝首脳会談の前に提訴されたことで注目を集めている。(ワシントン=園田耕司)
朝日新聞社